かんばんけんちく【看板建築】

 

 関東大震災(大12.9.1)の復興期である大正末期〜昭和初期にかけて建てられた、通りに面した店舗正面だけにタイルや銅板が貼ってあったり、曲線を多用した「西洋風」にモルタルなどで装飾された、2〜3階建て(=見かけ上は3階だが法規上では2階。3階部分は屋根裏部屋)の和洋折衷の木造建築物。その表面が平らで屏風や看板みたいなことから、「看板建築」と名づけられた。(藤森照信氏による命名といわれている)

 

ありし日の誠信堂薬局
  おそらく建物の正面入り口に掲げられる「ファサード看板」から由来しているのだろうが、真相は謎である。イタリアのフィレンツェ近郊にあるような、正面がのっぺりとした装飾のない壁に大窓、入り口のみの簡素な造りの教会建築や、歴史的建築物の「顔」となる正面入り口部分の外観(表面)だけを保存する「ファサード(工法)」にも似ている。
 

 看板建築は書店、食堂、薬局、理髪店、旅館など多岐にわたるが、主に「個人商店」が大半である。設計者も建築家などではなく、建築主(=店主)が街のブリキ屋やペンキ屋と相談してデザインしたもの、または無名な画家によるものが多い。民衆のデザインによる近代建築である。

 この看板建築の見物スポットとして有名なのは、東京の神田・神保町周辺地域であるが、これらの建築物は東京を中心とした関東一円に広まっている。

この建物の歴史を知りたい方は、本誌『ソレイケ1』をご覧下さい。



20世紀のおさらい辞典(C)FUJI-NISHI.2003-2012

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